がん遺伝子関連検査
がんは遺伝子の異常によって引き起こされる病気です。どの遺伝子に異常が起きているかは、患者さんによって異なり、遺伝子変異の種類によってがんの特徴や効果のある治療薬も異なることがわかっています。近年、次世代シーケンスの解析技術を用いることで、患者さん毎にがんの遺伝子変異を迅速かつ網羅的に解析できるようになり、得られた情報を適切ながん治療薬の選択や新しいがん免疫療法に役立てることができるようになりました。
CPMでは、次世代シーケンスの技術と独自のデータ解析技術により、がん免疫療法の治療候補となるネオアンチゲンペプチドの情報をご提供する「ネオアンチゲン解析」と、患者さん自身のがん遺伝子変異情報から治療に役立つ情報をご提供する「がん遺伝子変異解析」を臨床検査として実施しています。
ネオアンチゲン解析
ネオアンチゲンとは、がん細胞に生じた体細胞変異に由来する新規抗原で、がん免疫療法の理想的な標的と考えられています。「ネオアンチゲン解析」では、患者さんのがん組織の遺伝子情報をもとに、がん免疫療法の治療候補となるネオアンチゲンペプチドの配列情報をご報告します。
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※ネオアンチゲンペプチドを利用したがん免疫療法は、認定再生医療等委員会の審査を経て、厚生労働省へ届け出を行っている専門のクリニックで受けることができます。
検査に必要な検体
腫瘍検体※および対照検体(血液など)
※腫瘍検体は、専用の保存溶液を用いて保存されたものが最も適していますが、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE) 組織でも解析を行うことができます。
検査の方法
腫瘍検体と対照検体から抽出したDNAと、腫瘍検体から抽出したRNAを用いたシーケンス解析により、患者さんの遺伝子変異およびHLAタイプに基づいたネオアンチゲンを予測します。
①全エクソーム解析※1
腫瘍検体と対照検体から抽出したゲノムDNAを用いて、全エクソームシーケンス解析を行います。両検体の全エクソームデータから、がん細胞のみで起きている遺伝子変異を特定します。
⇒がん遺伝子変異解析
②RNAシーケンス解析※2
腫瘍検体から抽出したRNAを用い、RNAシーケンス解析を行います。RNAシーケンスデータから、各遺伝子変異のがんでの発現量を確認します。
③変異遺伝子の選択
全エクソームデータとRNAシーケンスデータから、がんで発現している遺伝子変異をもつ遺伝子を特定します。
④ネオアンチゲン予測
対照検体の全エクソームデータから患者さんの持つHLAタイプを調べ、コンピュータアルゴリズムによってHLA分子に結合する遺伝子変異を含むペプチド(ネオアンチゲンペプチド)を予測します。
⇒ネオアンチゲン解析
※1:全エクソーム解析
全エクソーム解析は、ヒトゲノムのうちタンパク質をコードするエクソン領域(エクソーム)を選択的にキャプチャーし、効率的に解析する手法です。疾患を引き起こす多くのバリアントはエクソン領域に位置することが知られています。
※2:RNAシーケンス解析
RNAシーケンス解析は、迅速かつ正確に細胞中に存在する全ての遺伝子転写産物(トランスクリプトーム)の配列・発現量を解析する手法です。サンプル中のトランスクリプトームを網羅的に解析し、各遺伝子転写産物を定量することができます。
がん遺伝子変異解析
「がん遺伝子変異解析」では、がん組織から患者さん自身のがん遺伝子変異を解析し、適応する治療薬候補(米国FDA承認薬および日本国内承認薬)の情報、遺伝子変異数(Tumor Mutation Burden;TMB)およびDNAミスマッチ修復遺伝子変異の情報をご報告します。特に遺伝子変異数(TMB)やDNAミスマッチ修復遺伝子変異は、免疫チェックポイント阻害薬の有効性と相関があることが報告されています(参考文献:Cristescu R, et al. Science. 2018;362(6411))。
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検査に必要な検体
腫瘍検体(凍結組織またはホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織)および対照検体(血液など)
検査の方法
腫瘍検体と対照検体から抽出したDNAを用いて全エクソーム解析を行うことにより、患者さんのがん遺伝子変異を網羅的に解析します。
がん遺伝子発現解析
「がん遺伝子発現解析」では、がん組織の遺伝子解析により、オンコアンチゲン、および免疫チェックポイント分子等免疫に関連する分子の発現量を解析します。
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オンコアンチゲンは、がん細胞で特異的に高発現し、正常細胞ではほとんど発現が認められないタンパク質で、がん細胞の生存や増殖に必須の機能を持ち、免疫反応を引き起こす抗原性を有しています。オンコアンチゲンに由来するペプチドを免疫治療に用いることにより、がん細胞を傷害するT細胞を誘導することができます(参考文献:Mizukami, et al. Cancer Sci. 2008;99(7):1448-54.)。
また、免疫治療の効果は免疫チェックポイント分子やHLAの発現量等の影響を受けると考えられており※、これらの分子の発現量を確認することで、免疫チェックポイント阻害剤の併用や抗原(HLA拘束性)の選択等、治療の選択に役立てることができます。
※免疫チェックポイント分子が発現していると、免疫が抑制され、免疫治療の効果が抑えられることが知られています(参考文献:Ohaegbulam, et al. Trends Mol Med. 2015;21(1):24-33.)。また、HLA分子の発現が低い場合、がん細胞が抗原提示をできず、免疫細胞によるがん細胞の攻撃が期待できないと考えられています(参考文献:Hicklin, et al. Mol Med Today. 1999;5(4):178-86.)。
検査に必要な検体
腫瘍検体(凍結組織またはホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織)
検査の方法
腫瘍検体(腫瘍組織等)からRNAを抽出してシーケンスを行い、オンコアンチゲンおよび免疫に関連する分子のがん細胞での遺伝子発現量を解析します。