免疫反応解析
私たちの体は、細菌やウイルス、がん細胞などの異物を見つけると、免疫細胞によって異物を排除する働きがあります。がん免疫療法は、この免疫細胞の働きを高めることでがん細胞を排除する治療法で、投与した薬物自体ががん細胞に作用するのではなく、投与した薬剤によって活性化した体内の免疫細胞ががん細胞を攻撃することが特徴です。そのため、がん免疫療法の治療効果は、体内の免疫細胞の活性化(免疫反応)を確認することによって評価することができます。
CPMでは、免疫反応を確認する検査として、細胞傷害性T細胞から産生されるIFN-γを検出する「IFN-γ ELISPOT解析」、フローサイトメトリーによりがん抗原特異的T細胞を検出する「MHCテトラマー解析」、T/B細胞受容体(TCR/BCR)の多様性を解析する「TCR/BCRレパトア解析」を実施しています。
IFN-γ ELISPOT解析
細胞傷害性T細胞(CTL)は、抗原に反応してIFN-γを産生します。「IFN-γ ELISPOT解析」では、
ELISPOT法を用いて、血液中に存在するCTLから産生されるIFN-γを検出することで、患者さんの体内におけるCTLの活性化を確認します。「IFN-γ ELISPOT解析」によって、がん免疫療法の治療効果を確認することができ、その後の治療の参考として役立てることができます。
検査に必要な検体
末梢血単核球(PBMC)および抗原ペプチド
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検査の方法
PBMCと抗原ペプチドを用いて、サイトカインで刺激を加えながら2週間培養した後、IFN-γ ELISPOT法にてIFN-γ産生細胞を計数します。IFN-γ産生細胞数に基づき、がん抗原特異的な免疫反応を以下の4段階で判定します※。
+++ | 強い免疫反応が認められる |
---|---|
++ | やや強い免疫反応が認められる |
+ | 弱い免疫反応が認められる |
- | 免疫反応が認められない |
NA | 検査が実施できなかった場合 |
※免疫反応判定は、参考文献(Kono K, et al, J Transl Med. 2012; 9;10:141.)による判定法(一部改変)に基づいて実施しています。
抗原ペプチド特異的スポット検出例
+:ペプチド添加あり -:ペプチド添加なし(陰性コントロール)
ペプチドワクチン治療前(Pre treatment)と比較し、ペプチドワクチン治療後4週(4w)からペプチドワクチン治療後
16週(16w)にかけて抗原ペプチド特異的な免疫反応が確認されています。
MHCテトラマー解析
蛍光標識したMHCテトラマーを用いたフローサイトメトリーにより、抗原特異的T細胞を検出します。
IFN-γ ELISPOT解析と同様に、投与した抗原ペプチドに対する特異的CTLの誘導を確認することができ、がん免疫療法の治療効果との関連を検討することができます。
検査に必要な検体
末梢血単核球(PBMC)および抗原ペプチド
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検査の方法
T細胞表面に発現しているT細胞受容体(TCR)は、抗原ペプチドとMHC分子の複合体(ペプチド-MHC複合体)を特異的に認識して結合します。「MHCテトラマー解析」では、PBMCと抗原ペプチドを用いて、サイトカインで刺激を加えながら2週間培養後、蛍光標識したペプチド-MHCテトラマーを用いたフローサイトメトリーによって、抗原特異的T細胞を検出します。検査報告書には、CD8陽性T細胞中の、抗原ペプチド特異的MHCテトラマー陽性細胞の検出率を示します。
抗原ペプチド特異的MHCテトラマー陽性細胞の検出例
ペプチドワクチン治療前(Pre treatment)と比較し、ペプチドワクチン治療後4週(4w)からペプチドワクチン治療後
16週(16w)にかけて抗原ペプチド特異的MHCテトラマー陽性細胞の存在率の増加が見られます。
TCR/BCRレパトア解析
抗原を認識するT/B細胞受容体(TCR/BCR)の遺伝子情報(V遺伝子,J遺伝子,CDR3領域)および各T/B細胞クローンの存在比率を網羅的に解析します。生体内の免疫状態はさまざまな疾患やその治療効果に関連しているため、「TCR/BCRレパトア解析」により疾患の状態や治療後の免疫細胞の変化を知ることができます。
検査に必要な検体
末梢血単核球(PBMC)もしくは組織
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検査の方法
血液または組織検体からRNAを抽出し、次世代シーケンサー MiSeq(Illumina)を用いて塩基配列を取得します。取得した塩基配列を用いて、TCR/BCR遺伝子を解析します。検査報告書には、多様度指数やTCR/BCRクローンの遺伝子情報(検出頻度上位10クローン)、クローンの頻度分布(検出頻度上位10クローン)を示します。
多様度指数
項目 | 多様度指数※ |
---|---|
TCRα | 27.09 |
TCRβ | 27.09 |
クローンの頻度分布
TCR/BCRクローンの遺伝子情報
No. | V遺伝子 | J遺伝子 | CDR3領域のアミノ酸配列 | 検出頻度 |
---|---|---|---|---|
1 | TRAV8-2*01 | TRAJ6*01 | CVVSDRGGSYIPTF | 18.3638 |
2 | TRAV1-2*01 | TRAJ38*01 | CAVRDWSNAGNNRKLIW | 2.8678 |
3 | TRAV1-1*01 | TRAJ23*01 | CAFMIYNQGGKLIF | 2.2582 |
4 | TRAV21*01 | TRAJ57*01 | CAVRLTQGGSEKLVF | 2.0227 |
5 | TRAV13-1*01 | TRAJ30*01 | CAASMVRDDKIIF | 1.3716 |